『いえでを したく なったので』リーゼル・モーク・スコーペン

  • 2016.07.18 Monday
  • 23:03

暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

今週末から、隣の公園でラジオ体操が始まったみたいで、朝早くから賑やかです。ということは、子供たちは夏休みに突入ということですね。羨ましい・・・

 

田舎で育ったので、夏休みは一日中、外で遊んでいた気がしますが、今の子供たちはどんな感じでしょう。今回の絵本はこちら。原書は1960年代に出版されているので(うーん、結構昔ですね。)、もっと自然が豊かで、外遊びが基本だった頃ですよね。兄弟4人が訳あって、家出してしまいます。

 

 

一体何があったのかな、と様子を覗いてみると・・・どうやら、お父さんとお母さんが仲違い。原因はもしかしたら、いたずらっ子の4兄弟かもしれないけれど、とにかく、いやーな雰囲気。家に居たくないから、家出しちゃおう、というわけです。

 

きっと本人たちは大真面目なんだけれど、読んでいる方は、ピクニックに行くような感じでワクワクしてしまう。彼らの目的地は大きな木。そこには素敵なツリーハウスがあるんですから、最適です。でも・・・そこで思わぬトラブルが!彼らは、別の家出先を目指さなくてはなりませんでした。

 

次にやってきたのは、睡蓮が浮かぶ素敵な池。さあ、今度こそ!と思いきや、ここでも問題勃発です。と、点々と場所を変えていくのですが、やっぱりおうちが一番というハッピーエンド(皆さんも、想像はついていたとは思いますが)。行く先々で出会うもの、拾ったものというのは、他愛もないものなのだけど、子供心には特別なもの。

 

表向きは「家出」でも、本当のところは「子供だけの冒険」。今の子供たちも、夏休みならではの体験をしてほしいな、と思います。

あっ、こちらの絵本の中身はモノクロです。繊細なペン画が味わい深いですよ。

 

*『いえでを したく なったので』 
リーゼル・モーク・スコーペン(作) 
ドリス・バーン(絵) 
松井 るり子(訳) 
ほるぷ出版(2014年刊行)

『はじまりのはな』マイケル・J・ローゼン

  • 2016.02.08 Monday
  • 00:13
寒い季節は早く過ぎ去ってほしい。2月はそんな季節ですよね。でも3月になると、学校などではお別れの季節。春にはまだなって欲しくないという気持ちの人もいるのではないでしょうか。今日の絵本は、まさに、そんな心境を表したようなお話です。



ばらいろのほっぺをしたローザは渡り鳥。まもなく来る冬に備えて、仲間の皆と旅支度です。ローザがどうしても持って行きたいもの。それは、ローザのほっぺと同じ色をした花の種でした。でも、種を入れたバッグはローザには重く、飛んでいるうちに、みるみる仲間から遅れ、川に落ちてしまいました。

それを見ていた犬が、川に飛び込み、ローザは助けられます。新たに始まった犬のミールと飼い主のアンナとの暮らし。最初は一日一日がどうしようもなく長く、ローザは仲間が恋しくて仕方ありません。

アンナが植木鉢に蒔いてくれたバッグの中の種も、芽が出て、少しずつ大きくなっていきます。長い長い冬。でも、その季節でも楽しいことはいくつかあり、日々馴染んでいくローザ。

ほっぺの花が咲き、春がやってきました。花を見つけた仲間たちがローザの元にやってきますが、それはまた、一つのお別れでもあり、始まりの時。誰しも人生で何度か経験する心情が、細やかに描かれています。

私も12月にスペインから戻ってきた時は、しばらく放心状態でした。本音を言うと、日本に戻ってきたくなかった(笑)。これまで、すごくたくさんの国に行ったわけではないですが、これほど後ろ髪ひかれる思いで帰ってきたのは、久々の経験でした。今までホームシックというものになったことはなく(本当に一度も!)、その気持ちがよくわからなかったけれど、こういう気持ちなのかしら、と思った次第です。逆のパターンですが・・・

そんなわけで次回のブログは、ちょっと息抜きにスペインの写真でも載せてみようかな、と思っています。たまたまこのブログに辿り着いて読んでくださったみなさん、ありがとうございます!

*『はじまりのはな』
マイケル・J・ローゼン(作)
ソーニャ・ダノウスキ(絵)
蜂飼 耳(訳)
くもん出版(2014年刊行)

『ぶどう酒びんのふしぎな旅』アンデルセン

  • 2016.01.29 Friday
  • 18:03
昨年はほとんどといっていいくらいブログが書けませんでした。申し訳ないです。もちろん書かなくても誰に注意されるわけでもないのですが、お店として運営している以上は、きちんとしなくては・・・と反省しきりです。でも、心から楽しいと思っていないと、なかなか言葉がでてこないものですね。プロとして文章を書いている方々はすごいです。

と、前置きは長くなってしまいましたが、今回はこんな絵本を読んでみましたよ。
 


原題は『びんの首』。アンデルセンというと人魚姫や親指姫などよく知られていますが、こちらのお話は、一作品だけの絵本としてはほとんど出版されていないようで・・・私もこのお話は知りませんでした。
藤城清治さんの影絵で綴られるアンデルセンのお話・・・なんて贅沢!と思ってしまう一冊です。実際に70ページほどのボリュームに加え、豪華なつくりの絵本となっています。

さて、お話はというと・・・
貧しい家の窓辺にある古びた鳥かご。そこに小鳥の水飲み用にと、割れたびんの首が吊るされていました。コルクで栓をされた口を下にして、小鳥を眺めています。

ふと昔を思い出したびんの首は、誰に語るというわけでもなく、懐かしい日々のことを語り出します。ガラスから生まれたびんには、上等な葡萄酒がつめられました。最高級品と書かれたラベルも素敵です。

売られていった葡萄酒の着いたところは、毛皮商人の家。その家の美しいお嬢さんが、バスケットに葡萄酒のびんを詰めました。バスケットに入れられ、野原にやってきた葡萄酒のびん。生まれて初めてコルクを抜かれたのは、お嬢さんの婚約を祝う時でした。

空っぽになったびんは、二人の門出を祝うべく、ぽーんと空に放り投げられ、思わぬところへ・・・今度は別の誰かに拾われ、予想外の人々と再開し、遠く異国の地へ行ったかと思うと、懐かしい場所に戻ってくるという、長い長いびんの旅が描かれていきます。びんの視点で描かれていくものの、登場人物それぞれが辿った人生に、なんとも言えない気持ちになります。

「このお話はハッピーエンドか」と聞かれると、正直答えるのが難しいですね。かといって、悲惨な終わり方でもないのです。「これが現実」という表現がしっくりくるかもしれません。

あとがきを読むと、藤城さんのこの作品への思い入れがわかります。これはもう、説明するよりも一読していただいたほうが、この絵本の良さがわかると思います。

*『ぶどう酒びんのふしぎな旅』
アンデルセン(作) 藤城 清治(影絵)
町田 仁(訳)
講談社(2010年刊行)

『とんぼ』チョン・ジョンチョル/イ・グヮンイク

  • 2015.09.24 Thursday
  • 22:57
あっという間に9月に入り、もう、お彼岸ですね。
自宅の周りは田んぼが多いので、この連休は稲刈りがだいぶ進んだ感じです。

今日は、初秋にぴったりな絵本をご紹介します。8月からとんぼはたくさん飛んでいたけれど、よく見ると、今の時期は種類も違ってきていたりと、なかなか興味深いですよ。

 


「とんぼの死」から始まる絵本なのですが、不思議と重くないのです。とんぼが死に、あり(蟻)がそれを自分たちの食べ物として運んで行く・・・こう書くと味も素っ気もないのですが、「ありが とむらい はじめます」という表現から、その後の雰囲気ががらっと変わる気がします。
 


大勢のありが協力して、とんぼの亡骸を分解していく様は、決してグロテスクでも悲しいものでもなく、自然の摂理として当然のこととして受け止められるのです。「たらん たらん」となんともいえない言葉でつづられていく、一生懸命に働くありの様子。一つの命が、別の命へとつながれた秋の日の出来事は、とても印象的で、はっとさせられるものがありました。

この作品は、1925年に書かれた詩とのことでした。しかも、当時14歳の少年が書いたとは驚きです。新たにイラストが加えられ(柔らかいタッチのイラストが、これまた絶妙!)こうして絵本になったようです。

あとがきを読むと、「たらん」の響きは野辺送りで使われる鈴の音とあって、なるほどと思いました。この詩人の感性に脱帽です。今度原書を仕入れてみようかな。

*『とんぼ』
チョン・ジョンチョル(作)イ・グヮンイク(絵)
おおたけ きよみ(訳)
岩崎書店(2011年刊行)

『まどのむこう』チャールズ・キーピング

  • 2015.08.11 Tuesday
  • 16:34
図書館の棚をうろうろしてましたら、なんだかとてもインパクトのある絵本が目に留まりました。

 


主人公はジェコブという男の子。小学生でいうと低学年くらいでしょうか。彼の知っている世界はアパートの前の通りだけ。この通りが彼の世界の全てです。

描かれているのは2階の窓から見ていたある日の出来事なのですが、予想外の展開に唖然としてしまいました。子ども向けにしては容赦のない話の展開。世の中で起こる出来事は、時としてむごいこともあるという事実をはっきりと伝えています。

カーテンの隙間からのぞくジェコブの目(表紙がまさにその状況)。通りの真向かい、斜め右に斜め左のお店。限られた視界から見える建物の描写は、映画のカメラワークのよう。ジェコブのおでこに映り込んだ十字架は、何かしらと思ったら、お向かいの教会の十字架の影という具合に、細部まで描かれています。

近所の住人たちが通りを行き交い、のんびりとお話が進むと思いきや、状況は一変。暴れ馬が通りを走っていきます。この馬たちの躍動感もすごい!その後、馬たちはなんとか取り押さえられ、やれやれといった感じですが、どうやら馬たちは何か事件を起こしていったようです。

カーテンの隙間からでは、事件の全容がわからないし、外の声も聞こえません。お向かいのおばあさんの犬に何かあったよう・・・でも、はっきりと何があったかは描かれていません。それでも読者には想像がつきます。ジェコブも本当は気づいているのではないか、と思うのですが、そこもあやふやなまま。

作品の解釈は人それぞれと思うのですが、「2階の安全な部屋、部分的にしか見えないカーテンの隙間」は、怖いもの、受け入れ難いものから逃げてしまう「心」なのではないかな、と思いました。誰しも持っているもので、大人になったからなくなるという気持ちではないと思うけれど、生きていれば、辛くても真正面から対峙しなくてはいけない出来事もあるはず。

すごく楽しいお話ではないですが、印象に残る本なのは確かです。この独特なタッチ、何か見覚えが・・・と思っていたら、子どもの頃に持っていた『めすのこやぎとおそろしいいぬ』という、これまた子どもには強烈すぎる内容の絵本を描かれた作家さんであることに気づきました。

子やぎが逞しく生きていく様を描いた作品なのですが、物語の一番の部分は、かつて母やぎを倒した犬との対決シーン。正直言って怖い。子どもの時、とにかく絵が怖くて、本棚の隅っこに押し込んで、できるだけ触らないようにしていました(谷川俊太郎さんの『なおみ』と同じくすみっこに。これも違う意味で怖かった)。

大人になれば名著と理解できても、子どもには少々刺激が強いんです。もったいない!でも、伝えたいメッセージはとても大切なこと。作者のぶれない姿勢は素晴らしいです。

*『まどのむこう』
チャールズ・キーピング(作)
いのくま ようこ(訳)
らくだ出版

『うみべのまちのタッソー』ウィリアム・パパス

  • 2015.03.01 Sunday
  • 21:46
長い間ご無沙汰しておりました。あっという間に3月ですね。まだまだ寒い日は続きますが、ちょっとでもぱっとした気分になれたらな、というわけで、ギリシャが舞台のこんな絵本を取り上げてみました。



水彩画の色合いも素敵ですが、生き生きとした雰囲気が伝わってくる筆遣いも必見です。人物の描き方も独特で、異国情緒もたっぷりです。

ギリシャの海辺のまちに住むタッソーとアテナは猟師のおとうさんと三人暮らし。貧しいため、兄妹二人は夏休みには食堂で働いているのですが、お兄さんのタッソーはそこでブズキという楽器(マンドリンっぽい?)弾き、妹のアテナは食事を運ぶ係をしています。

タッソーはかなり上手な弾き手で、食堂のお客さんは大喜び。みんなダンスが好きなので、音楽にあわせて飛んだりはねたり。

いつまでも踊っていたいお客さんたちですが、タッソーだって何時間も弾き続けることはできません。タッソーがこれ以上弾けなくなると、お客さんたちも帰り始めます。

食堂のおやじさんには、これはとても悔しいこと。何かいい方法はないかと考えたのが、当時は最新鋭のジュークボックス。

疲れ知らずのジュークボックスは、物珍しさもあって大人気。お客さんもおやじさんも大満足です。途端にお払い箱になってしまったタッソーはがっかりです。

その後の食堂はどうでしょう。一日中鳴り響く音楽にお客さんも町の人々も辟易しています。意に介さないのはおやじさんだけという感じ・・・

お客が来なくなった食堂には、アテナの仕事ももうありません。泣く泣く帰ってきたアテナが見つけたのは、久しぶりに目にしたタッソーの楽器でした。久々にタッソーが弾いてみると、近所の人たちが、一人またひとりと外に出てきました。

いつもの町に戻り、みんな満足。ジュークボックスのその後はちょっと哀れですが、最後はハッピーエンドのお話です。

50年くらい前に書かれた絵本ですが、情報過多で便利な現代にも通じる内容です。残念ながらもう絶版の絵本なので、図書館か古本での入手となるようです。

*『うみべのまちのタッソー』
ウィリアム・タッソー(文・絵)
じんぐう てるお(訳)
らくだ出版(1962年刊行)

『クリスマスってなあに?』ジョーン・G・ロビンソン

  • 2014.12.20 Saturday
  • 16:26
外国の人と話していると、日本のクリスマスはやっぱり不思議に見えるそうで・・・まあ、確かに。否定はしません。なんで七面鳥でなくフライドチキンなのかとか、クリスマスイブはどうして彼氏と彼女のものなのかなど、聞かれても言葉につまる・・・

外国の文化をいいとこ取りしてしまうのは、節操がないのかもしれないけど、新しもの好きで、外からのものを受け入れられる柔軟性は、ある意味で長所。例えばレストラン。イタリアン、中華、フレンチなどなど、こんなに各国の料理を食べられる国はないのでは?

と、日本人の立場を擁護しつつも、クリスマスやハロウィーンに関しては、まだまだ分が悪いのも事実。今日の絵本は、タイトルずばりの内容です。でもとってもおしゃれな絵本ですよ。子どもから、こんな質問されても、読んでおけば困らないかも?



ベツレヘムに向けて旅をするヨセフとマリア。旅の途中、宿屋はいっぱいで馬小屋に泊まることになった二人。その晩に馬小屋で生まれたのがイエス様というわけです。羊飼い、三人の賢者など、クリスマスの成り立ちがさらりと書かれています。

ここから先は、クリスマスの準備など、わくわくするイベントが綴られています。この絵本が描かれたのは1940年代のようなので、レトロ感がありますね。

クリスマスカードを手作りする子どもたち。プレゼントを買いに街に行き、次は、クリスマスプディング作り。キャロルを歌うキャロリングの人たちをもてなしたり、部屋中を飾り付けたりと、やることはいっぱいです。

そして迎えるクリスマス当日。たくさんのプレゼントやカード、そして美味しそうなご馳走!これだけで十分満足なのですが、きちんと教会に行き、郵便やさんやプレゼントをくれた親戚の人たちに、きちんとお礼をすることまで、さりげなく書かれていて、「おおっ」と思ってしまいました。

読後、何にしても、心構えというのは大事だな、と思ってしまいました。手作りのクリスマスカードのページをめくっていて、年賀状を楽しんで書いていたのはいつ頃だったかな、と。印刷も進化しているのもあるけど、年々、やっつけ仕事になっているような・・・時間的制約はあっても、書いている間は、ゆったりとした気分で書きたいものですね。

*『クリスマスってなあに?』
ジョーン・G・ロビンソン(文・絵)
こみや ゆう(訳)
岩波書店(2012年刊行)

『ねこ ねこ こねこ』ブルノー・ホルスト・ブル/ヤーヌシ・グラビアンスキー

  • 2014.10.26 Sunday
  • 17:50
ここ2ヶ月は、公私ともに忙しく・・・ブログがこんなにもおろそかになってしまいました。すみません。紹介したい絵本は山ほどあるのに・・・

気を取り直して・・・今日の絵本は、ネコ好きの方なら、是非!手にとってもらいたい絵本です。(犬好きの方は、ごめんなさい・・・)



ネコの絵本と一口に言っても、たくさん種類がありますよね。どちらかと言うと、可愛らしさが全面に出たものが多いと思うのですが、この作品は「可愛らしいさ」というより、野性的な「猫らしさ」が描かれています。

表紙を見てみると・・・ネコが興味津々に見ている時って、こんな表情してますよね。ページをめくってみたら、リアルなネコの表情に圧倒されてしまいました。

なんでこんなに生き生きしているんだろうと思って、よく見ていくと、なるほど。迷いのない筆使いがそうさせているようです。しゅっと引いた線はまさに、ぴんと立ったネコのしっぽそのもの。ひげの具合もいい感じです。

添えられている文章は、お話というよりは詩のような雰囲気。読み物としての絵本ではないので、言葉と一緒に、画集として楽しむのが良いのではないでしょうか。

各国版の入手が難しいなか、日本では翻訳出版されたものが、まだ出版されているのはうれしいですね。

*『ねこ ねこ こねこ』
ブルノー・ホルスト・ブル(作) ヤーヌシ・グラビアンスキー(絵)
まえかわ やすお(訳)
偕成社(1969年刊行)

『雨、あめ』ピーター・スピアー

  • 2014.06.07 Saturday
  • 14:51
久々のブログになってしまいました。この頃、この書き出しが多くて申し訳ないです・・・お店のほうも、掲載していない商品がまだまだあるので、こちらも早めに取りかかりたいところ。

せっかくの週末、関東地方は大雨です。来週もぱっとしない天気が続くみたいで、気分もどんより。こんな気分の時には・・・と思い出したのが、こちらの絵本です。



ご存知の方も多いかもしれませんね。雨の絵本では『おんなのことあめ』も好きですが、この絵本でも「雨」が素敵に描かれています。

姉弟が庭で遊んでいると、雨が降り出しました。あっという間に、ざあーっとやって来た雨。ネコも犬も大急ぎで家に駆け込みます。

家に戻り、早速レインコートや長靴を身につけた姉弟は、傘を差して再び外へ。雨の中の探検の始まりです。

雨樋からあふれる雨水に触れてみたり、一輪車にたっぷり溜まった水を、ざばーっと空けてみたり。排水溝に吸い込まれていく雨水の動きにも目を見張ります。

小さな動物たちが、あちこちで雨宿りをする様も可愛らしく、雨粒が光る蜘蛛の巣も素敵に見える。いつもと同じ場所なのに、いつもと違う世界。誰しも経験したことのある雨の日の不思議な感覚。見ているだけでそれが伝わってきます。

この絵本は文字なし絵本なのですが、読んでみると(見てみると)、文字なしにした理由がわかると思いますよ。

絵本はまだまだ続き・・・雨の中から帰ってきた姉弟は、濡れた衣服を脱いで、お風呂でさっぱり。おやつを食べた後は、今度はおうちの中で遊びます。湯気で曇った窓や窓を伝う雨を見ていると、家の中にいても、やっぱり雨の日。

夜半に強まったかと思った風雨もやがて止み、朝方には穏やかな天気に。雨の余韻が残る清々しい朝の空気に触れたかと思ったら、お話はそこでおしまい。

まるで自分もそこにいて味わっているような感覚。こんなに感覚を刺激する絵本はそうはないですよ。侮れない一冊、ぜひ読んでみてください。

*『雨、あめ』
ピーター・スピアー(作)
評論社(1984年刊行)

『チョコレート屋のねこ』スー・ステイントン/アン・モーティマー

  • 2014.02.28 Friday
  • 14:28
チョコレート好きにも、ねこ好きにも、ぴったりな絵本を見つけましたよ。私はどちらも大好きなので、なんとも幸せな気分。

でも、チョコレート屋で飼われているネコも、お店のおじいさんも、あまり幸せではなさそうなんですね。



静かだけれどたいくつな村。代々チョコレートを作ってきたおじいさんの店も、ここ数年は、ほこりをかぶった状態に・・・お店と同じにどんどん気難しくなっていったおじいさん。笑い方まで忘れてしまったようです。

そんな毎日でしたが、ふと、何を思い立ったのか、おじいさんはねずみのチョコレートを作ってみます。しっぽの先だけがピンクの砂糖がついた可愛らしいねずみ。

おじいさん同様、しばらくねずみなんて捕ったことないねネコは、それをみて不思議な気分になります。チョコねずみのしっぽを、ちょっとかじってみたネコ。

チョコのほろ苦い味が口にひろがった途端、なんだか心まで軽くなったよう。「このチョコ、誰かに食べてもらいたい!」と思いつくまま、向かいの八百屋にチョコねずみを持っていったネコ。そっと、さくらんぼのかごの側にかくしてみました。

チョコねずみにきづいた八百屋のおじさん。ぱくっと食べた途端、何かいいことが思い浮かんだよう。チョコレート屋のおじさんは相変わらず不機嫌だったけれど、八百屋のおじさんと一緒に、様々な果物をチョコでコーティングしていきます。

・・・昔は、オレンジピールのチョコなんて好きじゃなかったけれど、今では結構やみつきに。なんて、想像しながら絵を見ていると、益々食べたくなってきました。

お話に戻って・・・もしかしたら、チョコねずみには不思議な力があるのかな?なんて思ったネコは、次々に他のお店にも運んでいきます。パン屋さんに食品店、花屋さんに金物屋さんまで。

みんな、チョコレート屋にアイデアを持って行き、そこで自分のお店の商品と合わせた新しい物を作り出していきます(今風に言うとコラボ商品ってやつですかね)。

おじいさんに笑顔はまだ戻りませんが、少しずつ変わってきているみたいです。素敵なチョコレートを得意げに眺めるようになったおじいさん。ある時、ぱくっとチョコねずみを食べてみました。

もくもくと仕事にとりかかるおじいさんの手から生まれたものは、お城や船、ドラゴンなど立派なチョコレートの彫刻でした。魔法のチョコは、おじいさんにも最高のアイデアを与えてくれたようです。おじいさんに笑顔が戻り、お店も村もすっかり有名になって、お話はハッピーエンド。

チョコレート屋さんを舞台にしたお話と言えば、『ショコラ』という映画もありましたね。あの映画でもチョコに宿る不思議な力が描かれていたような。確かに疲れている時のチョコには、絶大な力がありますよね。おじいさんの長いスランプを解決したチョコ、私も欲しいなあ(まだちょっと疲れぎみ)。

著者も最後にちらりと触れていますが、ネコにチョコは御法度なので、この美味しさは人間だけ味わったほうが良さそうですよ。

*『チョコレート屋のねこ』
スー・ステイントン(作) アン・モーティマー(絵)
中川 千尋(訳)
ほるぷ出版(2013年刊行)

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