『少女ソフィアの夏』トーベ・ヤンソン

  • 2014.07.27 Sunday
  • 22:33
毎日暑いですね。今日は夏の読書におすすめな児童文学をご紹介。朝の涼しい時間に読書なんて優雅だな、と思いつつ、私自身は夜型からなかなか抜けれない・・・夏の虫が鳴いている夜だって悪くはないし、と言い訳しつつ・・・
まあ、どちらにしても、夏に読んで欲しい一冊です。



舞台はフィンランドの小島にある「夏の家」。主人公のソフィア(まだ10才にもなっていないくらい?)と、70才も年が離れたおばあさんのある夏の日々が描かれています。

お母さんをなくしたばかりのソフィアとお父さん、そしておばあちゃんが暮らす夏の家。様々な経験を通してちょっとずつ成長していくソフィア。

森へのちょっとした冒険にも、おばあちゃんはソフィアに付き合ってくれるし、いろいろ質問しても、おばあちゃんなりの回答で答えてくれます。

とはいえ、おばあちゃんとのやりとりは、穏やかなというよりは、お互いはっきり言い合っている感じ。それでも安心して読み進められるのは、愛情のうえに成り立ったやり取りだからかもしれませんね。

もう一つ、注目したいのは北欧の大自然。ムーミンシリーズでもそうですが、「大自然と人」というよりは、「大自然の中にいる人間、生き物」という視点で描かれていること。読んでみるとよくわかります。

原画展で見た絵でも、本の挿絵でも、登場人物が自然の中にぽつんと小さく描かれている絵が多いし、印象的です。人間は到底、自然にはかなわない、と改めて認識してしまうような・・・今回のお話は「島」が舞台ということもあって、よりダイレクトに自然の豊かさ、偉大さが伝わってきます。

あとがきを読むと、トーベさん本人の身内の方々が、登場人物のモデルとなっているよう。ご本人も、実際に島暮らしをしていた経験があるとのこと。リアルな描写には納得です。

日本の夏とはまた違った夏の日々。旅行に行けなくても、ちょっとした気分を味わえる作品です。ぜひ、ご一読を!


こちらの作品のスウェーデン語版(原書)はお店でも扱っています。
こちらからどうぞ。

*『少女ソフィアの夏』
トーベ・ヤンソン(著) 渡部 翠(訳)
講談社(1993年刊行)

『つるばら村の魔法のパン』ほか 茂市 久美子

  • 2013.12.24 Tuesday
  • 23:47
ブログを書くペースが戻ってきたぞ、と思っていたら、調べものやら別の仕事で目を使いすぎ(*-*)、久々に頭痛に悩まされました。

パソコンは本当に油断大敵。本や雑誌を読む時はここまでつらくないんですけどね。今日は目が疲れきる前に、一気読みしてしまった読み物のシリーズをご紹介します。今回は図書館からの調達です。



つるばら村にある小さなパン屋さん「三日月屋」。パン職人のくるみさんが一人で切り盛りしているお店です。看板猫は、ニボシという名のキジトラの猫。

このシリーズは『つるばら村のパン屋さん』が1作目。『つるばら村の魔法のパン』が完結となる10作目になります。最初は宅配パン屋としてお店を始めたくるみさんも、実店舗を持ってからは6年。パン屋さんに訪れる不思議なお客様のエピソードとともに、お話は進んで行きます。

自然豊かなつるばら村の住人は、人間だけではありません。動物や昆虫、木々や草花までみんな共存しています。くるみさんのお店にやってくるのは、うさぎだったりくまだったり、時には風や木の精までご来店です。

と、こんなふうに書くと、「うわー、メルヘン過ぎ・・・」と思ってしまうでしょ?でも、これが不思議とそんな感じがしないんですよ。どこか現実的で「そんなこともあるかも・・・」と思えてしまう。故郷が岩手だという作者の方の観察眼がそうさせているのかもしれません。

大人が小学生向けの読み物を読むと、先が読めてしまって、いまいちストーリーに入り込めない。というのはよくあることですが、今回は、良い意味で期待を裏切られました。1話ずつは短いのに、どれもわくわくが続くんですよね。

まあ、気になった方は、最初の作品を手に取って見てください。ちなみに、4作目〜9作目までは、くるみさんメインではなく、つるばら村に住む他の住人たちが主人公になっています。はちみつ屋さん、家具屋さん、洋服屋さん…などなど、みなさん事業を営んでいます。それぞれが持ちつ持たれつのところがあって、つるばら村は、自営業者にとっての理想郷!私はそんなふうに思いながら読んでいました。

スローライフを取り入れた児童読み物。こういうと、薄っぺらく感じるかもしれませんが、実際は、人と人のつながり、自然とのつながり、そういったものが主題だと思います。

「つながり」と言えば、最終巻のあとがきを読んでいてびっくりしたことがあるんです。くるみさんのモデルになったという、自転車で宅配をする熊本のケーキ屋さんのこと。

その時、「あっ私、それ知ってるかも。」と思いました。十数年前、出張で熊本に行った時に、商店街でたまたま見かけたのですが(自転車にパウンドケーキを積んで販売されてました)、仕事中だったので、その時買わなかったのでした。仕事後、同じ場所に戻ってみたら、もういない・・・。とても残念に思ったのを覚えています。

そのお店のことが結構詳しく書かれていたので、私もお店の名前を知ることができました。楽しく読み終えた後に、美味しいデザートまでいただいた気分。

子どもだけに読ませるにはもったいないので、年末年始の読書にいかがでしょうか。読後はなんだか元気が出ること請け合いです。

*『つるばら村のパン屋さん』
*『つるばら村の三日月屋さん』
*『つるばら村のくるみさん』
*『つるばら村の家具屋さん』
*『つるばら村のはちみつ屋さん』
*『つるばら村の理容師さん』
*『つるばら村の洋服屋さん』
*『つるばら村の大工さん』
*『つるばら村のレストラン』
*『つるばら村の魔法のパン』
茂市 久美子(作) 中村 悦子(絵) 柿田 ゆかり(絵)
講談社より刊行

『あるきだした小さな木』テルマ=ボルクマン/シルビー・セリグ

  • 2013.08.24 Saturday
  • 22:11
今日は、懐かしい感じのする児童文学作品を紹介します。表紙から受ける印象通り、レトロ可愛いイラストが満載です。いつ頃の作品だろうと思ったら、60年代でした。なるほど納得。



森の中で、パパの木とママの木と一緒に暮らしているちびっこの木。お友達は、森の動物や鳥の子どもたちです。

一番仲良しの小鳥は、ちびっこの木にいろいろ教えてあげます。あちこち飛んで行って見聞きしたこと、そして人間は怖いんだよ、とていうこと。鳥の目から見た人間は、鳥を撃ち落としたり、籠に閉じ込めてしまったり、怖い事この上ない。

でも興味津々な木は、人間の子どもたちに会ってみたくてたまりません。そんな時、森に迷い込んできた男の子。何だか害はないようです。迷子になった男の子も探しにきた両親もいい人みたい・・・。あの人達と暮らしたい!という思いがきっかけで、驚くべきことが起こります。

「歩いてみたらどうかしら・・・」実際にやってみると、なんと、根っこが地面から抜けるではありませんか。さあ、ちびっこの木の冒険の始まりです。

村を過ぎ、大きな街へ出たちびっこの木。ちょっと危険を感じたら、上手い具合に逃げるわけです。そして、広い野原に出た時、人々が自分の木陰で休んでいるのを見て、ここでずっと暮らそうと考えます。

でもここで、予想外のことが!引っこ抜かれた木は、海を渡り、気づくと大きなお屋敷の庭に植えられています。

お屋敷には、美しいけれど可哀想なお嬢さんが住んでいます。ほとんど家から出してもらえず、恋人とも離ればなれ。

ある計画をして、お嬢さんと木はお屋敷を脱出するのですが、最後に木は、どんな場所に落ち着くことにしたのでしょう。

ここで描かれているのは一貫して「自由」。自分らしく生きるために、自由を求めるというのが主題だと思います。

木を主人公にしていますが、親元を離れ、様々な経験をして自立して行く様は、人間も同じ。自分はどうだろうか、ちゃんと地に足つけて生きてるだろうか、とちょっと考えてしまいました。

原書はフランス語ですが、オリジナルは絶版のようです。日本語翻訳版が、今も重版されて残っているのはうれしいですね。

*『あるきだした小さな木』
テルマ=ボルクマン(作) シルビー・セリグ(絵)
花輪 莞爾(訳)
偕成社(1969年刊行)

『クローディアの秘密』E. L. カニグズバーグ

  • 2013.05.19 Sunday
  • 21:02
アメリカの児童文学作家、E. L. カニグズバーグの訃報を目にしたのは、ちょうど1ヶ月前のこと。ご高齢でしたので、仕方のないことかもしれませんが、とても残念です。

6年前に書かれた作品(『ムーンレディの記憶』)も、全く年齢など感じさせない内容で、一気に読み終えたのを覚えています。

もう一度、彼女の作品を読みたくなって、本棚を探しましたら、見つけたのがこちらの雑誌。光村図書から出版されている児童文学の季刊誌『飛ぶ教室』です。(雑誌名はきっと、ケストナーの作品名からですよね?)



2年ほど前のこの時は、カニグズバーグ特集で、書店でたまたま見かけて購入。作品それぞれの背景や、様々な角度からの考察などもりだくさんで、へえーと思ったり、なるほどと思ったり。楽しませていただきました。

雑誌をぱらぱらめくっていたら、どうしても『クローディアの秘密』が読みたくなって、本棚を探したけれど・・・ない。久しぶりに読みたいと思うものほど、実家に置いてきていて、近所の書店にも置いてないのですよね。そんなわけで図書館から調達です。



1968年に出版された作品ですが、全く色あせない面白さ。
クローディアは4姉弟の一番上で、12才くらいの女の子。ある時、長女であることの理不尽さに我慢できなくなって(私も長女で、これすごくわかる)、家出を計画します。相棒に選んだのは、3人の弟のうち、下から2番目のジェイミー。

物語の最初から引き込まれるのは、ちっとも子供らしくない入念な家出の計画。しかも隠れ場所は、メトロポリタン美術館。

守衛に見つからないように、館内で寝泊まりするのは、スリリングだけど、ちょっと憧れる出来事ですよね。数日は、美術館中のものを見て楽しむ二人ですが、ある時、話題の「天使の像」に出会ったことで、その謎に魅せられていきます。

実はミケランジェロの作品では?と噂されている「天使の像」は、最近、美術館が安値で購入したもの。ふとしたことから、彫像の底面に刻印があることに二人は気づきます。

と、普通の子供向け小説なら、二人が大人に先駆けて謎を暴いて一躍スター・・・なんて結末もあるのでしょうが、そうでないところがこの作品の面白いところ。

美術館の人たちは、そんなことちゃんと知っています。しかもその刻印だけでは、確固たる証拠にはならないんですって。クローディアたちはがっかりしますが、元の持ち主であるフランクワイラー夫人を訪問することを考えます。

この夫人は、美術品蒐集家でもあり研究者でもあるようです。天使の像の本当の証拠も、夫人が握っています。

ちょっと戻って・・・。クローディアが家出をした理由。それは、戻った時には違う自分になっていないと意味がないということ。周りの扱いという点もあるのでしょうが、本当の部分は、自分の内面の成長なんです。

夫人は、二人との会話で、こういうところも見抜いているのですが、普通の大人がするようなことは言わず、変わった提案をするんです。

あまり言うと読む楽しみがなくなってしまうので書きませんが、それぞれの秘密を交換条件に、取り引きをします。

クローディアにとって、自分の中に「秘密」を持つことは、本人ははっきりとわからなくとも、何かが変わっていくきっかけのようなもの。冒険やミステリーの要素も充分に楽しいですが、一番大事な、クローディアの内面の成長を、きっちり描いているところが素晴らしいです。

そういえば昔、NHKのみんなのうたで流れていた「メトロポリタン・ミュージアム」。ふと思い出したら、歌詞はこのお話を連想させるものばかり。ちょっと検索してみたら、このお話から着想を得て作られたとの記述も随分ありますね。いろんな意味で懐かしい1冊でした。

*『クローディアの秘密』
E. L. カニグズバーグ(作) 松永 ふみ子(訳)
岩波書店(1975年刊行)

*『飛ぶ教室 2011年春号 No.25』
光村図書

『時計坂の家』『十一月の扉』高楼 方子

  • 2012.10.20 Saturday
  • 17:51
今日は絵本ではなく、ヤングアダルトの読み物の紹介です。
前回に引き続き、高楼 方子さんの作品。



絵本では、元気いっぱいで楽しい作品が多いように感じますが、読み物のほうは、12〜14才くらいの女の子の繊細な部分が描かれています。

『時計坂の家』は、函館(と思われる)が舞台のお話。12才の夏休み、あまり行ったことのない祖父の家に滞在することになったフー子。時計塔や洋館のある町並み、随所に見られるロシア文化など、独特な雰囲気が漂います。
その家の階段の踊り場にある不思議な窓枠。そこに掛かった錆びた懐中時計は動くはずがないのに、だんだん花の形に変わっていって・・・。

亡くなったとされているおばあさんの謎や、西洋人形のような従姉妹、不思議な存在感のお手伝いさんなど、少しミステリー仕立てで読み進んでしまいます。


『十一月の扉』は、素敵な洋館「十一月荘」で数週間を過ごすことになった14才の爽子が主人公。親の転勤で転校するからなのですが、2学期が終わるまでという限定付きの一人暮らし。この年頃で、親と離れて過ごすという部分がちょっと憧れますよね。
個性あふれる住人たちとの毎日で、様々なことを吸収していく爽子。ある時、日々の出来事を自分の物語に変えて書き始めます。

実は、両作品とも同じ年頃の男の子が登場してきて、ちょっと淡い恋愛も垣間みられます。久々に読み返して、今の自分の年齢にふっと気付いて、若さがうらやましくなったりもしました。。。

前者は、フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』や梨木香歩さんの『裏庭』が好きな人にはおすすめです。
後者は、ジブリ作品の『耳をすませば』あたりが好きな人は、楽しめるのではないでしょうか。

*『時計坂の家』リブリオ出版(1992年刊行)高楼 方子(作)

*『十一月の扉』新潮文庫(2006年刊行)高楼 方子(作)
ハードカバー版は現在もリブリオ出版から出版されています。

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