『Flower Spirits 花を生きる』スティーブン・N・メイヤーズ

  • 2013.07.21 Sunday
  • 20:55
一昨日、駅前の本屋さんで見かけた写真集。透明感のある不思議な表現に魅かれて購入してみました。



透き通った花は、ガラス細工のような、繊細なシフォンでできているような感じに見えますが、生花を写したものなんです。

レントゲン機器を利用したX線撮影という特殊な方法に、手彩色を施した写真は、新鮮な驚きを与えてくれました。加工しているという点では、邪道と思うかもしれませんが、不思議と嫌な感じはしないです。

もちろん、ありのままの姿の花々も素敵です。生命力のあふれた鮮やかな色彩は、見ていて楽しいもの。でも写真集にすると、時に、きつすぎる場合もあって、なかなか好みのものを見つけるのは難しかったりもします。

夏の暑い時期というのもあって、涼しげな表紙に魅かれて(版元や書店の戦略にまんまとはまって?)つい、購入してしまいました。

購入した理由は、実はもう一つありまして。詩や言葉が、写真とあわせて一つずつ掲載されているんです。著者は様々なんですが、個人的に好きな詩人や小説家なども結構入っていたのも良かったところ。

原書(英語がオリジナル・アメリカで出版)は2006年に刊行されていたので、どちらで購入しようかと迷ったのですが、詩も楽しみだったので、翻訳版で購入してみた次第です。

ネイティブなみに英語や他言語を味わえる方なら良いですが、言葉を味わうなら、どうしても母国語になってしまいますよね。翻訳書になると、訳者に委ねることが多くなるかと思いますが、それはそれ。その訳者の方の表現を楽しめばいいかな、と思っています。

あっ、この写真集&詩集は、最初から最後まで一気に読むことはおすすめしません。写真は通してみても問題ないですが、詩はどれも、花にまつわるものなので、一度に読むと皆似たり寄ったりに感じてしまうかも・・・。

まあ、写真集や詩集に手が伸びる時は、気合いを入れて読もうというよりも、ぼーっと眺めたい、ゆったりと味わいたいという気分の時だと思うので、いらぬ心配かもしれませんね。

どうでもいいおまけですが、下の写真は昨日の朝、近くの公園で撮ったものです。



撮った写真はどれもぼやっとした感じ。なんでだろうと思っていたら、単にレンズに貼ったカバーがはがれそうだったから・・・。真ん中にいる鳥は、ハトだと思ったらカラス。相変わらず眼鏡なしでふらふらしているから、よくわかっていない・・・。



久々に早起きしたもので、思い立つまま公園に行ってみたわけですが、早朝は気持ちがいいですね。ちょうど入り口が開いたばかりだったので、一番のりでした。この後、ダッシュして入ってきた男の子がいたのですが、どうやら目当てはカブトムシやクワガタのよう。

私にとっての癒しスポットは「緑のある場所」ですが、すぐに行けない場合は、先ほどの写真集も良く効きそうです。

*『Flower Spirits フラワースピリッツ 花を生きる』
スティーブン・N・メイヤーズ
グラフィック社(2013年刊行)

『川のうた』ラングストン・ヒューズ/E. B. ルイス

  • 2013.06.18 Tuesday
  • 22:47
今日は蒸し暑い日でしたね。水辺が恋しくなる季節、こんな川の絵本を知っていますか?



日没間近の川辺に佇むおじいさんと少年。とても印象的な絵に魅かれ、手に取ってみました。中を開くと・・・

川を背に、遠くを見つめる黒人と唐突に始まる言葉。
 ー わたしは、たくさんの川を知っている。

そして次のページには、穏やかな海原に浮かぶ一艘のボート。
 ー 世界のなりたちとおなじくらい古く

読み進むと、使い込んだ水瓶を掴んだ手に目が引き寄せられ・・・
 ー 人間の体をながれる血より古い川を。

次のページ。手を合わせ祈る男性は、暗闇に溶け込みそう。
 ー それで、わたしのたましいも、川のようにふかくなったのだ。

わかりにくいかもしれませんが、この絵本は、「川」について書かれた詩の絵本なんです。(上記の斜体文字は引用箇所)アフリカ系アメリカ人の作家、ラングストン・ヒューズが書いたものですが、なんと18才の時に書いたのだそうです。原題は「The Negro Speaks of Rivers」。

1920〜30年代にかけて起こったとされるハーレム・ルネサンス。その時代の代表的な作家の一人とのことですが、これまで知りませんでした。

もう少し前の南北戦争や、この時代の後に来る公民権運動など、教科書でちらっと載っていたかもしれないけれど、遠い異国のこともあり、ほとんど知らない。時代や環境の違いもあるけれど、自分が18才の時に、こんな詩は書けないです。

詩は、この後もまだ続きます。リンカーンに思いを馳せ、様々な川へ耳をすます。川に抱く畏敬の念が強く伝わってきます。

よく「器が違う」とは言うけれど、まさにそういう感じです。彼は大きな視野で物事を見、物事の本質を捉えることができる人だったのではないか、と思いました。

正直言ってこの絵本、たくさんは売れない(失礼!)と思います。はっきり言って、子供向けでない。でも詩の本の一つだとすると、贅沢この上ない絵本です。

絵本をきっかけに、あまり馴染みのない世界を知ることができたし、大人だから味わえる絵本というのも、たまにはいいじゃないですか!

もしこれで、ラングストン・ヒューズに興味を持った方がいたら、こんなのはいかがでしょう。



ジャズの歴史と曲の由来が満載です。ジャズ好きはもちろん、私のように音楽に詳しくない人でも楽しめる一冊です。

ジャズはニュー・オーリーンズで始まった、ということは、なんとなく聞いたことはあるけれど、その本当の始まりは、当時奴隷としていたアフリカ人の太鼓から。いろいろ奥が深いですね。

訳者の木島始さんは、大のジャズ好きだったとのこと。絵本の翻訳をたくさん手がけた英米文学者のもう一つの顔ですね。ちょっと気になる表紙は『メキメキえんぴつ』の作者とは別の方です。似てるけど。

現在、新刊市場で流通している彼の作品は、絵本やこの本を含めてわずか数点。いろいろな形で読書を楽しんでいただけたらうれしいです。

木島 始さん関連の他の作品紹介はこちら

*『川のうた』
ラングストン・ヒューズ(作) E. B. ルイス(画)
さくま ゆみこ(訳)
光村教育図書(2011年刊行)

*『ジャズの本』
ラングストン・ヒューズ(作) 木島 始(訳)
晶文社(1998年刊行)

『トーベ・ヤンソン短篇集』冨原 眞弓(編・訳)

  • 2013.06.11 Tuesday
  • 20:46
トーベ・ヤンソンと言えばムーミン。今年はなんだか、ムーミン・グッズが流行っているようですが、ムーミン以外の作品があるのをご存知でしょうか。



画家でもあり作家でもあったトーベ・ヤンソン。こう書くと、どちらが本当の職業なんだろう、と考えてしまいますが、彼女の場合はどちらもメイン。それぞれに一流。たいへん才能があった人物だったようです。

作家の分野においても、小説・短篇作家と児童文学作家とで、甲乙をつけるのはナンセンスかもしれません。個人的には、小説・短篇の方が好きですが、これを読むことで、ムーミンシリーズをより深く読めることも事実です。

こちらの短篇集は、『トーベ・ヤンソン・コレクション』(全8巻)として刊行された中から、短篇を選りすぐって編んだもの。いきなり全集はきつい、という場合にはうってつけの文庫です。

短篇は大きく分けると、「エッセイ風な作品」と「現実と空想がないまぜになった作品」という感じです(私の勝手な視点では)。編者はこれを5つの主題に分けて、再構成しています。

どの作品にも共通しているのは、自身の体験が根底にあること。そして鋭い観察眼。電気や水道がない島暮らしでの経験や、フィンランドでは少数派になるスウェーデン系フィンランド人としての経験が、様々な形で表現されています。

正直言うと、この文庫はさらっと読める代物ではありません。いろいろな本を読んでいると、やたら長いのに内容は薄いというのもあれば、薄い冊子なのになんだか時間がかかる、というものがありますよね。

この文庫は明らかに後者です。短篇=単なる短いお話ではなくて、無駄を削ぎ落した濃い内容のものだから、読み飛ばせない(笑)。その分たっぷり味わえます。

エッセイ風なものは、ちょっとだけメイ・サートンを想起させ、空想が入り交じったものは、フリオ・コルタサルにも似ているな、と思いながら楽しみました。



実は私、アニメも含めて、ムーミンはちょっと苦手だったんです。うっそうとした雰囲気の森や山が寂しげで(おさびし山って名前もありましたよね)、全体的に暗い印象なのが受け付けなかった理由です。

ムーミン谷の、仲が良いのか悪いのか、つながっているのかいないのか、よくわからないコミュニティーも今ひとつだったんですよね。

でも、大人向けの作品群を読むと、「ああ、なるほど」と腑に落ちる部分もあり・・・。強烈な印象の作品群でもあるので、児童文学が柔らかく感じるという部分もあり・・・そんな感じです。

ちなみに表紙の装画は、トーベ・ヤンソン自身が描いたもの。彩色は、装丁家としても有名な祖父江慎さんが手がけています。色のイメージは本当にぴったり!

ちらっと書きましたが、彼女はスウェーデン系フィンランド人です。そのため、著作はスウェーデン語で書かれていました。『さびしがりやのクニット』の奥付を見ても、スウェーデン語版から訳されているのですよね。

原書の絵本を手元に置きたいという方には、お店で『さびしがりやのクニット』スウェーデン語版がありますので、いかがでしょうか。

*『トーベ・ヤンソン短篇集』
冨原 眞弓(編・訳)
ちくま文庫(2005年刊行)

『十月はハロウィーンの月』ジョン・アップダイク

  • 2013.05.08 Wednesday
  • 19:23
5月にはそぐわないないタイトルかもしれませんが、実は一年を通して楽しめる絵本なんです。表紙をよく見ると、子供たちが遊ぶ水辺の風景。原題は「A Child Calendar」という詩の絵本です。



海外文学が好きな人は、ジョン・アップダイクの作品という点に魅かれるかもしれませんが、私は、ナンシー・エクホーム・バーカートの絵に魅かれて購入。繊細なタッチがたまらなく素敵です!

どんな絵を描く人かは、こちらを参照ください。「白雪姫」でコルデコット賞を受賞しています。(お店の商品は中国語版です)

肝心な内容ですが、1月、2月、3月と、それぞれの月を詠っています。四季折々のイベントも描かれているのですが、どちらかというと、作者が大人になっても覚えている子供時代の光景が、色濃く出ています。

凍って割れた牛乳瓶が転がっていたこと。バレンタイン・デーのハートを切り抜くハサミの音。舗道に残った棒つきキャンデーのしみなど、特別な出来事ではないのに、なぜか強烈に覚えていて、それを思い出すと、その時の空気感まで思い出してしまう。そんな感じで綴ったのではないかな、と思うんです。

アメリカの絵本なので、年中行事や文化の違いを感じるのは仕方ありませんが、大人だから楽しめる詩の絵本、試してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、こちらの原書は、画家違いでは今も出版されていますが、バーカート(画)のものは絶版です。日本語版を出版してくれたみすず書房に感謝です。

ついでにこちらの書籍もご紹介。先に挙げた絵本は、「詩人が贈る絵本」というシリーズで、みすず書房から刊行されたもの。選者兼訳者は詩人の長田弘さんが担当されていました。



どんな詩集を出されているのか、気になる方もいると思うのでご案内です。詩に関しての説明はとても難しいので書きませんが、こちらの本の帯の文句が言い得てます。

「静かに心をつないでゆく、寛ぎのときのための詩集」。まさに、その通りです。心がざわつくような時に読むと、穏やかな気持ちになれます。たまには詩集もいいですよ。

*『十月はハロウィーンの月』
ジョン・アップダイク(作) ナンシー・エクホーム・バーカート(画)
長田 弘(訳)
みすず書房(2000年刊行)

*『世界はうつくしいと』
長田 弘(作)
みすず書房(2009年刊行)

『EL CONTADOR DE CUENTOS』SAKI

  • 2013.02.23 Saturday
  • 21:51
今日の絵本は、日本語ではなくスペイン語の絵本です。そしてお話は、スコットランドの作家のものという一風変わった作品をご紹介します。



作者のサキ(本名は別にあります)は、風刺がきいた短編小説を数多く残したスコットランドの作家です。ご存知の方はご存知でしょうが、日本ではあまり知られていないかも。

よく、O. ヘンリーと比較されることが多いとのことですが、読んでみると納得。あんな感じで、それよりもう少し手厳しい印象を受けます。いずれにしても読後にニヤリとする短編が多いです。

このお話の原題は " The Story-Teller" 、日本語訳では「話上手」となっていて、電車の中での出来事がモチーフになっています。

ある電車のコンパートメントには、3人の子供たちとお目付役の伯母さん、そして乗り合わせた男性客が一人。

明らかに子供の世話が苦手そうな伯母さんに、まるで言うことを聞かない子供達。こういう場に乗り合わせてしまうと、確かに災難。

子供たちは、それぞれ好き勝手に騒いでいるのですが、男性の目から見た彼らの描写も、妙に細かくて笑えます。

業を煮やした男性が、伯母さんの代わりにお話を語り始めるのですが、これが、子供たちには大受け、常識ある伯母さんは顔をしかめるばかり、という結末に。

絵本という形はとっているけれど、シニカルな内容の短編小説が元なので、やはり大人向けの絵本ですね。



絵本の出版元はベネズエラの出版社。ケース付きの凝ったデザインで、思わず手元に置きたくなる作りです。

スペイン語がわからなくても、文庫で出版されている短編集(上の写真)とあわせて読むと楽しめますのでいかがでしょうか。

こちらの絵本はお店でも扱っております。こちらからどうぞ。

*『EL CONTADOR DE CUENTOS』SAKI
Published by Ediciones EKARE

*『サキ短編集』 新潮文庫
サキ(作) 中村 能三(訳)
新潮社(1958年刊行)

『エミリー』バーバラ・クーニー(画)

  • 2013.01.26 Saturday
  • 22:16
今日の絵本は、実在した人物のお話。とても謎めいた一生を送ったアメリカの詩人、エミリー・ディキンソンのお話です。



生涯を独身で過ごし、30代から亡くなるまでは、屋敷の外には出なかったほどの隠遁ぶりだったそう。たくさんの詩が見つかり、詩集として世に出たのは、彼女の死後。謎めいてますね。

絵本のあとがきには、人嫌いなところがある一方、近所の子供たちとは仲良しだったとあります。そのあたりから生まれたのが、この『エミリー』という絵本なのかもしれません。

黄色い家のお向かいに、小さな女の子「わたし」の一家が引っ越してきます。黄色い家の住人は、妹と一緒に住んでいるけれど、ずっと外に出てこないという風変わりな女性。

ある時一家は、押し花のように乾いた花が同封されたに不思議な手紙を受け取ります。ピアノを弾きにきてほしいという内容です。

ドキドキしながら、お母さんと一緒に訪ねた「わたし」。でも、エミリー本人は姿を表しません。演奏への拍手や声は聞こえるのに・・・。お母さんがピアノを弾いている時に、こっそり階段へ向かってみると、踊り場に白い服をきた女性が・・・。

「わたし」とエミリーのちょっとした交流を描いた絵本なのですが、この絵本、エミリー・ディキンソンを知らないと、あまり面白くない絵本だと思うのですよ。

最初にこの絵本を読んだ時、彼女の詩を読んだことがなかったので、「ふうん。」というくらいの感想でした。もちろん、バーバラ・クーニーの絵は大好きですが。



そういうわけで、もし興味があれば、詩集もあわせて読んでみると楽しいですよ。写真のものは、数年前に購入した詩集で、だいぶ丁寧に編まれています。個人的には訳も好きです。

岩波書店からは『対訳 ディキンソン詩集』というものが出ていますし、以前、別の絵本とあわせて紹介した『アメリカ名詩選』にも、数編が収録されています。

今回の絵本の読み方は、子供向けではないのですが、大人ならではの絵本の読み方もいいかな、と思いまして紹介してみました。

バーバラ・クーニーの他の作品紹介はこちら
『ルピナスさん』
『空がレースにみえるとき』

*『エミリー』
マイケル・ビダード(作) バーバラ・クーニー(画) 掛川 恭子(訳)
ほるぷ出版(1993年刊行)

*『わたしは誰でもない エミリ・ディキンソン詩集』
川名 澄(編・訳)
風媒社(2008年刊行)

『Stopping by Woods on a Snowy Evening』Robert Frost

  • 2013.01.07 Monday
  • 22:09
絵本を読みたい時の気分もいろいろあると思うのですが、何となく穏やかに時間を過ごしたい、という時に、こんな絵本はいかがでしょうか。



アメリカの詩人ロバート・フロストの詩が、素敵なイラストと一緒に絵本になっています。原題は「雪ふる宵、森に佇みて」。

雪の降る宵に、なぜ森にたたずむのか。その理由は明示されていません。でも、そこにいる間の情景や感覚というものは、非常に短い文章なのに、はっきり伝わってきます。「詩」だからこそ味わえる不思議な感覚。



すぐ上の写真は旧版で、図書館から借りてきました(日本語版は絶版)。以前は、今のものより二周りほど大きくカバーも違っていました。挿絵の彩色も素朴な感じです。

絵本では、雪の降る宵に、おじいさんが馬とともにそりで森を訪れます。森の動物たちに、えさとなる種や草の束をそっと置き、静けさを味わった後、去っていくおじいさん。

画家が詩からイメージしたものを絵にしているので、読んでいるこちらも、描かれているとおりに想像ができます。それも楽しいのですが、自分なりのイメージで読みたい場合は詩だけで読むのもおすすめです。下記の岩波文庫に収録されています(表紙のアンドリュー・ワイエスの絵も素敵!)。



もしかしてというか、やっぱりというか、最後のフレーズは、かなり人生観のようなものを含んでいるだろうと思ったら、そういう側面もあるようです。気になった方、まずは一読。文庫には少し解説も載っています。

*『Stopping by Woods on a Snowy Evening』
Robert Frost/Susan Jeffers
*『白い森のなかで』ほるぷ出版
*『アメリカ名詩選』岩波文庫

原書(英語)と日本語版(中古)をお店でも取り扱っています。
英語版はこちら、日本語版はこちらです。

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