『ゆきがふる』蜂飼 耳/牧野 千穂

  • 2013.12.15 Sunday
  • 22:12
『うきわねこ』のお二人の新作と聞けば、読まずにはいられませんよね。私も早速読んでみました。でも今回は、心にちょっぴり痛みが残るかもしれません。



主人公のふうちゃんは、うさぎの男の子。雪の日の独特な静けさの中、一人で外にいます。雪の時だけに現れる道を通っていくと、その先にはふわふわころりの家。

大きな雪男のようなふわふわころりは、雪でテーブルや椅子を作っているところ。ふうちゃんに、甘い雪のお菓子を振る舞ってくれました。(雪の結晶でできたぺろぺろキャンディーみたいで素敵!)

そこにやってきたのは、ゆきぐも。フード付きのコートをきた可愛らしい(でもどこか冷たそうな)女の子の姿をしています。手にもっている糸の先には、風船のように浮かぶ灰色のくも。どうやらこれで雪を降らせるみたいです。

ゆきぐもが降らせる綺麗な雪を見て、ふうちゃんはお願いをします。熱を出している妹が見られるように、家のそばで降らせてほしいというお願いです。

ちょっとしたお願いのようだけれど、ゆきぐもが言うには、一番大事なおもちゃとの交換が条件。ふうちゃんはそれを良しとして、願いは叶えられました。

お母さんに赤い車の所在について聞かれても、水路に落としたことにしてしまったふうちゃん。

ふうちゃんが差し出したおもちゃの赤い車は、実はお父さんとの思い出の品。最後のほうで、お父さんの不在が明らかになり、心がきゅっとくる・・・。

牧野さんの繊細な絵と蜂飼さんの洗練された文章は、もちろん好きです。ですが今回は、文章を削ぎ落した分、読者の想像に委ねる部分が多くなってしまったのではないかな、と思いました。読後、ちょっとしたお願いにしては代償が大きいのではないか、と感じる人は私だけではないはず。

大事な思い出の品と交換してまで、雪を見せたいと思う妹は、よほどの病状なのかしら。(ページを繰っていくと、元気になっているようですが)

それとも、自然というものを自分の思い通りにしようとすることには、それなりの代償が必要ということなのでしょうか。どこか近寄り難いゆきぐもの雰囲気は、馴れ合いにできない冷たさが漂っています。

もしかしたら、周囲が思っているよりも、お父さんとの思い出に捉われてしまっているふうちゃんの心の成長について描いてる?思い出を手放すことで前に進めるのかな?などなど、解釈はいかようにでもできてしまう気がします。

最後のページで、雪が降る中、元気に外に飛び出していくふうちゃんと妹の姿が、ほっとさせてくれるのですが、やっぱりちょっと重い読後感なのは否めません。

単純明快な絵本というのではなく、味わって読む文学作品として捉えたほうが、楽しめると思います。みなさんの感想はいかがでしょうか?

*『ゆきがふる』
蜂飼 耳(文) 牧野 千穂(絵)
ブロンズ新社(2013年刊行)
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