『まどのむこう』チャールズ・キーピング

  • 2015.08.11 Tuesday
  • 16:34
図書館の棚をうろうろしてましたら、なんだかとてもインパクトのある絵本が目に留まりました。

 


主人公はジェコブという男の子。小学生でいうと低学年くらいでしょうか。彼の知っている世界はアパートの前の通りだけ。この通りが彼の世界の全てです。

描かれているのは2階の窓から見ていたある日の出来事なのですが、予想外の展開に唖然としてしまいました。子ども向けにしては容赦のない話の展開。世の中で起こる出来事は、時としてむごいこともあるという事実をはっきりと伝えています。

カーテンの隙間からのぞくジェコブの目(表紙がまさにその状況)。通りの真向かい、斜め右に斜め左のお店。限られた視界から見える建物の描写は、映画のカメラワークのよう。ジェコブのおでこに映り込んだ十字架は、何かしらと思ったら、お向かいの教会の十字架の影という具合に、細部まで描かれています。

近所の住人たちが通りを行き交い、のんびりとお話が進むと思いきや、状況は一変。暴れ馬が通りを走っていきます。この馬たちの躍動感もすごい!その後、馬たちはなんとか取り押さえられ、やれやれといった感じですが、どうやら馬たちは何か事件を起こしていったようです。

カーテンの隙間からでは、事件の全容がわからないし、外の声も聞こえません。お向かいのおばあさんの犬に何かあったよう・・・でも、はっきりと何があったかは描かれていません。それでも読者には想像がつきます。ジェコブも本当は気づいているのではないか、と思うのですが、そこもあやふやなまま。

作品の解釈は人それぞれと思うのですが、「2階の安全な部屋、部分的にしか見えないカーテンの隙間」は、怖いもの、受け入れ難いものから逃げてしまう「心」なのではないかな、と思いました。誰しも持っているもので、大人になったからなくなるという気持ちではないと思うけれど、生きていれば、辛くても真正面から対峙しなくてはいけない出来事もあるはず。

すごく楽しいお話ではないですが、印象に残る本なのは確かです。この独特なタッチ、何か見覚えが・・・と思っていたら、子どもの頃に持っていた『めすのこやぎとおそろしいいぬ』という、これまた子どもには強烈すぎる内容の絵本を描かれた作家さんであることに気づきました。

子やぎが逞しく生きていく様を描いた作品なのですが、物語の一番の部分は、かつて母やぎを倒した犬との対決シーン。正直言って怖い。子どもの時、とにかく絵が怖くて、本棚の隅っこに押し込んで、できるだけ触らないようにしていました(谷川俊太郎さんの『なおみ』と同じくすみっこに。これも違う意味で怖かった)。

大人になれば名著と理解できても、子どもには少々刺激が強いんです。もったいない!でも、伝えたいメッセージはとても大切なこと。作者のぶれない姿勢は素晴らしいです。

*『まどのむこう』
チャールズ・キーピング(作)
いのくま ようこ(訳)
らくだ出版
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